研究について

背景、理論的枠組み、研究計画、これまでの成果と今後の展望を体系的に示します。

研究背景と問題意識

グローバル化の進展に伴い、海外での労働災害や自然災害への備えは喫緊の課題です。 従来の防災教育は単一文化前提が多く、多文化・多言語環境では効果が限定されます。 本研究は、言語や価値観差がリスクコミュニケーションと安全行動の定着を妨げる課題に対し、普遍的かつ実践的な教育設計を探究します。

(課題を示す図・グラフ予定)
図1 課題概観(ダミー)

理論的枠組み:GBS と Job Aid

ゴールベースシナリオ(GBS)理論

学習者が具体的なゴール達成を目指し、現実的な文脈で意思決定を繰り返すことで実践的能力を涵養する設計理論です。 防災では、災害時シナリオで主体的な対応策選択を促し、転移性のあるスキル獲得を狙います。

GBS の詳細へ

ジョブエイド(Job Aid)

タスク実行を支援する簡潔な手順・情報ツールで、稀頻度だが重大な作業におけるミス低減と迅速化に有効です。 多言語・多文化環境でも直感的に使える設計を研究対象とします。

2枠組みの併用により、知識伝達型の限界を補い、状況適応的な判断・行動を支援するプログラム設計を目指します。

研究計画と方法論

ADDIEの考え方を参照し、分析→設計→開発→実施→評価の循環で進めます。方法論は Design-Based Research を採用します。

国内外の先行研究レビューと実務ヒアリングで課題・ニーズを明確化します。

学習目標明確化、設計原理(ガニエ・メリル等)の適用、プロトタイプ開発を行います。

教育工学・防災分野の専門家から妥当性評価を受け、改善します。

組織での試行導入を通じ、知識・スキル・行動変容等を定量・定性で評価します。

実証結果を踏まえ、展開ガイドラインと実装モデルを策定します。
データ収集はアンケート、インタビュー、観察、成果物分析を組み合わせて実施します。

現在までの成果と今後の展望(タイムライン)

文献研究・ニーズ分析を完了し、プログラム初期設計とジョブエイド試作に着手しました。 2025年度内に複数組織での実証実験開始を予定しています。

過去 未来
設計中(約40%)
  • 文献調査完了 達成
  • プロトタイプ設計 進行中
  • 実証実験開始(予定) 2025年度

詳細は 出版物・発表 セクションで逐次公開します。

補足:ゴールベースシナリオ(GBS)理論

GBS は構成主義的学習環境の設計理論で、カバー・ストーリー、ロール、ミッション、オペレーション、リソース、フィードバック等で構成されます。 意思決定と問題解決を伴う訓練に適し、防災領域での転移性の高いスキル獲得に有効です。

参考文献(一部)

  • 鈴木克明 (2010). インストラクショナルデザイン(ID)入門(eLPベーシック資料). 熊本大学.
  • Schank, R. C., Fano, A., Bell, B., & Jona, M. (1993/1994). The design of goal-based scenarios. The Journal of the Learning Sciences, 3(4), 339–375.
  • Mager, R. F. (1997). Preparing instructional objectives (3rd ed.). The Center for Effective Performance.
  • Gagné, R. M., Briggs, L. J., & Wager, W. W. (1992). Principles of instructional design (4th ed.). Harcourt Brace.
  • Merrill, M. D. (2002). First principles of instruction. ETR&D, 50(3), 43–59.